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「サウルの息子」 おぼろげに映し出される悪夢のような出来事が現実であったという衝撃

4月20日にDVDで
サウルの息子.jpg
◎「サウルの息子」
(2015 ハンガリー 監督:ネメシュ・ラースロー)
を見ました。
本作は、ゾンダーコマンドに所属しているハンガリー系ユダヤ人のサウルが
日々行われる非人道的で常軌を逸した状況の中で静かに狂い、
ある妄執に囚われて右往左往する姿を描いた作品。
ゾンダーコマンドとはユダヤ人大虐殺の舞台となったアウシュビッツで
同胞であるユダヤ人の死体処理などを行う特殊部隊で、
ゾンダーコマンド自体も数カ月で処理されてしまうという、
ナチスドイツの合理的な思考が生み出した世にもおぞましい存在
題材が題材であるため息が詰まりそうになる物語ですが、
本作の映像表現がそれに拍車を掛けてきます。
本作の画面サイズはビスタサイズよりも狭く、
サウルの顔以外がほとんどピンぼけという、特殊過ぎる映像なのです。
映画が始まると同時に始まる大量虐殺
その後も繰り返される虐殺&虐殺&虐殺
毒ガス、射殺、火炎放射器で焼かれる死体
サウルの背後で夥しい数の人間が死んでいきます
しかしそれらはおぼろげに映し出されるだけ。
まるでダンテの神曲の地獄編や仏教的地獄絵図
淡々と映し出されるぼんやりとした映像は非現実な悪夢のよう。
しかしこれは紛れも無く本当に起こった現実
そう認識した瞬間、窒息しそうになりました。
人類の歴史の中で最もおぞましい出来事
怒りや憎しみといった感情的な動機が存在しないまま、
ただひたすら機械的に人間が殺されていく。
頭を真っ白にしなければ心が耐えられない。
それでも本作は逃がしてはくれない。
本作は、視界が究極に狭められた世界でKIN-Gの首根っこを掴み、
絶望の海へ引き摺り込もうとしてきました。
映画が終わるとすぐ、KIN-Gはベッドへとなだれ込みました。
KIN-Gは本作から完全に逃げ出しました。
こんな化物のような映画とは向かい合えない。無理。

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